ブレード型製品事例

ブレードPCを一人一人に割り当てつつ集中管理、日立がセキュアクライアントを強化(ITmedia)
2005年5月23日と、またしても少し前の記事。既に時代遅れの話になってしまったかもしれない。かもしれないと言うより、x86サーバーでも仮想化技術が本格的に取り入れられ始めているので、ブレード1枚に対してクライアント1台という静的な割り当て方法は、既に最先端の話ではないことは確か。


この記事で気になったのは、製品の価格。ブレード1枚が約13万円、ベースユニットが20万円とある。さらに実際にコンソールとして使用するデスクトップPCが12万円を上回る値段。
たとえば日立は12万円弱でPentium4 3.4GHzのデスクトップパソコンを販売している。(これはIntelのCore 2発売に伴うCPU価格の改定を反映していない価格だと思われる)
この製品はクライアント1台につき、このパソコンの倍のコストがかかる。それでも「6万台ほどの引き合いがある」と、売れ行きは好調であるらしい。情報漏洩のリスクはクライアントPCの値段とは比べものにならなと言うことか。


しかし間違いなく、「シンクライアント専用マシンはコスト削減につながらない」ということを具体的に示していると思う。
コンソールに使うマシンが行う処理は、画面の描画と、キーボードとマウスからの入力をブレードに伝えることだけである。そのマシンに、十分単体で使用できるマシンと同等のコストが必要になっている。
実際に処理を行うのはブレードであるから、コンソールマシンは暇極まりない。私には非常に費用対効果効率が悪いと思えてならない。ここにコスト削減の余地があることは間違いない。


まとめれば、ブレード型シンクライアントの問題は、汎用デスクトップPCの価格は非常な勢いで低下するのにもかかわらず、コンソールに描画&入力専用マシンを必要とする点にある。コンソールマシンに汎用デスクトップPCを転用すればオーバースペックになり、専用マシンを開発すれば開発コストから価格が上昇することになる。


この問題に対して、実際の処理もクライアントで実行させるが、アプリケーションのデータはサーバーで管理することにしよう、というアイディアが考えられる。このアイディアを形にすると、おそらくネットワークブート型になる。


もちろんネットワークブート型にも問題がある。まず非常に太いネットワーク帯域が必要であるから、無線LAN環境で利用することは現時点では難しい。また、あまり表だって議論されないものの、Windowsに適用しにくいという問題もあるのではないか。ネットワークブートを行うにはカーネル以下のレイヤーでのサポートが必要になる。カーネル以下と言っても、Windowsのカーネルは一般用途ではネットワークブートをサポートしていないわけで、つまりTCP/IPでIDE HDDをエミュレーションするようなハードウェアの開発が必要になるということである。


では、ブレード型シンクライアントの問題点と、ネットワークブート型の問題点は、どのように解決できるか。
ブレード型の問題点はビジネスのやり方で解決しそうな気がするので、その道の人がやって欲しい。
私には、ネットワークブート型の問題点は、圧縮ブロックデバイスの転送、分散ブロックデバイス共有、そしてVMの活用などで解決できるのではないかと思った。問題が解決されれば、ブレード型が開拓した市場を、ネットワークブート型が奪い得る。


そんなこんなでした。